短文二つ 萩原朔太郎
群集と孤独
本当の孤独と言うものは━━ボードレールの言った通り━━群集の中でのみ味われる。
群集の中に居る時ほど、人生の落寞たる秋の悲哀や、
心を食い裂く、einsam(アインザーム)の痛みやを、寂しく哀切に感ずることはない。
それ故に真の孤独的性格者は、いつも都会にのみ生活して居る。
西行やワーズワースの如き隠遁者等が、都会を嫌って山里の中に籠ったのは、
如何にしても我々に理解できない、不思議な別の真理に属する。
おそらく彼等は、本当の深酷な孤独者でなく、
むしろ田舎の自然美を愛したところの、風雅な楽天家であったのだろう。
黄色い月夜に
宿命論は、しばしば容易なあきらめの思想として非難される。
さらば非宿命論はそうではないか?
人間のはかない努力を以ってして、尚且つ因果や定法の外に逃れようとする、
あの英雄的な焦燥から、より悲しげなあきらめの歌を聴かなかったか?
ああ、だれがそれを聴いているか! 波止場の黄色い月夜に。
『萩原朔太郎全集別冊 遺稿 下』より




































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