2023年3月30日木曜日

次の本が出来るまで その273

 マヨネーズ Mайонез



作:アントン・チェーホフ



役人が賄賂を取った。背徳行為の行われたその瞬間、上役が入って来て、感謝の紙幣の握られた拳を疑わしげにじっと見つめた。

役人はひどく狼狽した。

「ちょっとあなた!」と彼は、拳を開きながら、陳情者に向って言った。

「あなたは私の拳のなかへ何かお忘れになりましたよ!」



                   



ペテルブルグの新聞記者N・Zは、産業博覧会を視察しながら、ふとある展覧場に注意をとめて、何か書きはじめた。

「この二十五ルーブリ札を落としたのはあなたじゃありませんか?」

その展覧場の主人が、彼に紙幣を渡しながらこう言った。

「私が落としたのは、二十五ルーブリ札二枚だったがね!」とっさに記者が言った。

出品人はその頓智ぶりに舌を巻いて、彼に二十五ルーブリ札をもう一枚渡した。

これは小説にあらず、正真正銘の事実である。



※タイトルの意味がわからない。