2021年1月27日水曜日

次の本ができるまで その191

 半面の真理


アンリ・ド・レニエが女性について書いた文章を紹介します。その恋愛観、女性観は、フランスのブルジョワ階級の思想傾向を反映していると堀口大學先生は書いておられますから、たぶんそうなんでしょう。



恋愛は一個独立した感情である。それは、友情とも、尊敬とも、やさしさとも、慈愛とも、デリカシーとも関係がない。恋愛は、それ自ら以外のものには関心も持たなければ、また心づきもない。恋愛には、恋愛独特の理屈があり、空想があり、先入主があり、策略がある。恋愛にはまごころの言葉も、精神の言葉も通じない。それはまごころでもなければ、精神でもない。それは恋愛だ。



男は己惚れの強い馬鹿者だ。女がやっと我慢して交際(つきあ)っていてやると、早速もう、自分は彼女に必要欠くべからざる存在だと思い込んだりする。



女に対する場合、男に万事責任がある。雨が降ることも、風が吹くことも、彼女達の鼻の先に出来た小さな腫物(おでき)のことも、地震のことも、蝿が飛んでしまったことも、一切は男の責任だ。



女達が、「本当にあたしを愛していて下さるのだったら。」と云う時は、彼女達はすでに僕等が愛していると確信を持った時だ。女達が、「あなたはあたしなんか愛していらっしゃらないわ。」と云ったりする時は、自分が愛されていることをいよいよ確かに知った時だ。



アンリ・ド・レニエ(1864-1936)

フランスの詩人・小説家。極めて芸術的な高雅な作風と、完全な語法、美しい文章とを以て知られています。