『老人』 志賀直哉
芥川龍之介は、
「志賀直哉氏の作品を一貫している特色は、一言にして言えば知的なことである。氏の作品は、どれを見ても、巧妙なる建築家の手になった設計のように、整然たる面目を備えていないものはない。どの行を消しても、全体の釣合は破れてしまう、又、どの行を加えても、矢張全体の釣合が狂ってしまう。(中略)『老人』の如きは、実に僅々十頁の作品で、殆、何の遺憾もなく、おさめ得るだけの効果をおさめている。」
「志賀直哉氏の作品を一貫している特色は、一言にして言えば知的なことである。氏の作品は、どれを見ても、巧妙なる建築家の手になった設計のように、整然たる面目を備えていないものはない。どの行を消しても、全体の釣合は破れてしまう、又、どの行を加えても、矢張全体の釣合が狂ってしまう。(中略)『老人』の如きは、実に僅々十頁の作品で、殆、何の遺憾もなく、おさめ得るだけの効果をおさめている。」