2020年7月29日水曜日

次の本ができるまで その169

カミュの手帖より


新聞はもはや、ペストの話以外に語ることはなにもなくなってしまう。人びとはこういう。新聞にはなにも出ていない、と。

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ペスト。
私は心の準備をしようと努めている。だが毎日決まって昼間の、あるいは夜の一時間、人間が臆病になるときがあるものだ。私が怖いのはこの時間だ。

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ペスト。
だれもが我が身にペストを背負っている。というのは、だれも、この世のだれも、それを免れずにはいられぬからだ。また、たとえ一瞬の気晴らしのあいだも、他人の顔から息を吸ったり、他人に病毒を感染させたりしないよう絶えず自分を見張っていなくてはならない。自然の摂理は黴菌だけだ。あとは、健康にしろ、公正さにしろ、またお望みとあらば純粋さにしろ、すべては意志の結果なのだ。だから立派なひと、つまりだれにも病毒をうつさぬひととは、できるだけ気晴らしをしないひとのことだ。

※次はもっと明るい話をします。