貴重な存在 Rara avis
作:アントン・チェーホフ
犯罪小説の作者が刑事と話をしている。
「ひとつ、ならず者や無宿者の巣窟に案内してくださいませんか。」
「お安いご用ですとも。」
「それから、殺人犯の二、三のタイプに引き合わせてください。」
「それも大丈夫です。」
「それと、秘密の魔窟にもぜひ行ってみたいんですが。」
さらに作家は、贋札造りだの、ゆすりだの、詐欺師だの、夜の女だの、男妾だのに紹介してくれと頼む。
そのどれもに刑事は答える。
「それも大丈夫です……いくらでもいますよ!」
「もう一つお願いがあるんですがね。」最後に作家が頼む。
「小説の中に、コントラストをつける意味で、立派な人間を二、三人ださなきゃなりませんので、ひとつ、申し分ないほど公正な人を二、三人教えてくださいませんか……」
刑事は天井に眼をやって考えこむ。
「ふむ……」彼はうなる。「いいでしょう。探してみますよ!」
※チェーホフはコントをたくさん書いていますが、よくわからないものも多くあります。私が無知なだけですが。