2019年8月27日火曜日

石兮『芭蕉翁附合集評注』

『芭蕉翁附合集評注』石兮


『芭蕉翁附合集評注』は江戸時代の俳人、大島蓼太(おおしまりょうた)が編集した「芭蕉翁附合集」に石兮(せっけい)という人が一句ごとに短く解説を附したものです。つけ句を学ぶ人には必携の教科書だったようで、確かにこれを読めば芭蕉が極めて優れた言葉の使い手であったことがよくわかります。

ひとつふたつ抜き出して掲載します。



やさしき色に咲ける撫子


四ツ折の蒲團に君が丸く寢て


これも翁の例の恋句なれば、きもつぶるるまでよき句なり。四ツ折の蒲団の上にそつと丸く寢たる姿、えもいわず艶なるべし。さては前句の撫子にたとえたるこころなり。



さまざまに品かはりたる戀をして


浮世の果はみな小町なり


前句はすきずきしき人の、さまざまに恋したるなり。後句轉じて観想の情をおこし、小町の果をいいて、哀情多し。少壮いくばく時ぞ老いをいかんといえるこころなり。


※わたしも常に携帯し事ある毎に読み返すつもりでいます。いまはね。