2023年1月26日木曜日

次の本が出来るまで その267

 ある器官


 人々がこの器官のままならぬ自発性を発揮するのも無理はない。この器官は、別に必要のないときに、いやにうるさく出しゃばるくせに、何より必要なときに、折あしく萎縮する。また、独断でいかにも傲然とわれわれの意志に刃向かい、まったく尊大に頑強に、われわれの心や手の勧告をしりぞける。
 それにしても、人がこの器官の反抗を非難し、それを証拠にこの器官を断罪しようとするのに対して、もしこの器官が私に弁護を頼んでくるようなことがあるならば、おそらく私は、その仲間である他の諸器官に嫌疑をかけるであろう。他の諸器官は、この器官の機能の重要さと快さを羨むあまり、偽証をならべて訴訟を起こし、彼ら一味に共通する過失を意地悪くもこの器官ひとりに負わせ、この器官に敵対して全世界を武装させようと陰謀をたくらんだのではあるまいか。


※まあ、むかしはねえと遠い眼に。