マーク・トウェイン『人間とは何か』より
人間の頭ってものは、なに一つとして新しいものなんか考え出せるもんじゃない。そんな風にできてるんだよ。外から獲た材料を利用するだけの話なんで、要するに機械にしかすぎないんだよ。ただ自動機械みたいに運転するだけなんで、意志の力で動いたりするんじゃない。自分で自分を支配する力なんか、もちろんないし、その所有主にだって命令する力はない。
わしたち人間の良心って奴は、それがわたしたち自身にも苦痛をあたえんかぎり、他人の苦痛なんてことは、てんで念頭にもない。言葉をかえていえば、それがわしたち自身までを不愉快にでもしないかぎり、他人の苦痛なんてものには、まず例外なく完全に無関心だってことだ。
人間は自己犠牲なんてことを口にする。だが、言葉の通常の意味からすれば、そんなものは存在もしなければ、かつて存在したこともない。
要するにただ一つだけ──己の心の満足を求めるということ、そして自分でもいい気持になるという、ただそれだけだな。
※対話形式の文章の抜粋なのでこれだけ読んでもわからないと思います。詳しくは『人間とは何か』(岩波文庫)で。