香川景樹翁
《次の本が出来るまで その150》の続きです。
香川景樹翁が頼山陽(らいざんよう)と相携えて京都の稲荷山に詣でし時、
頼門の書生歌よむ心得を問ひしに
景樹翁「帰るにはまだ日も高し稲荷山 伏見の梅の盛り見てこん」と詠みて、
歌は前に趣向を求むるに及ばず只ありのままに詠むものなりと語りたり。
* * *
或る俳諧師「米洗う前に蛍の二ツ三ツ」という句を得たり。
香川景樹翁が頼山陽(らいざんよう)と相携えて京都の稲荷山に詣でし時、
頼門の書生歌よむ心得を問ひしに
景樹翁「帰るにはまだ日も高し稲荷山 伏見の梅の盛り見てこん」と詠みて、
歌は前に趣向を求むるに及ばず只ありのままに詠むものなりと語りたり。
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或る俳諧師「米洗う前に蛍の二ツ三ツ」という句を得たり。
これは上々の出来と喜び、景樹翁の許に行きこれを示されけるに、
景樹翁これを見て「この俳諧いかにも面白し。されどその蛍は死したるものと思はるる。
これ如何に」と問う。
俳諧師大いに怒り其の故を詰(なじ)るに、
景樹翁「さればなり。もしその蛍の飛行するものならんには、
「前に」を「前を」と云はざるべからず」と。
これを聞きたる俳諧師大いに悟るところありしといふ。
景樹翁これを見て「この俳諧いかにも面白し。されどその蛍は死したるものと思はるる。
これ如何に」と問う。
俳諧師大いに怒り其の故を詰(なじ)るに、
景樹翁「さればなり。もしその蛍の飛行するものならんには、
「前に」を「前を」と云はざるべからず」と。
これを聞きたる俳諧師大いに悟るところありしといふ。
※お後がよろしいようで。
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