次の本が出来るまで その35
大雅堂
むかし、ある人が画家の大雅堂に訊いたことがあつた。
「先生、つかぬ事をお尋ねするようですが、絵といふものは一体どんなところがむづかしいので……」
大雅は一寸額へ手をやつた。
「さやうさ。絵のむづかしいところといへば、まづ、紙の上に何一つ描いてないところでせうな。」
さすがに大雅だけあつて、絵の急所を知つている。
これを芸術家の生涯に見るも、その最も芸術的なのは、製作の最中よりも、寧ろ沈黙静思の間だといつていい。
※薄田泣菫。どの本に載っていたかは不明です。
下は大雅堂「草書千字文」の一部
天地玄黃(テンチゲンコウ)
宇宙洪荒(ウチュウコウコウ)
日月盈昃(ジツゲツエイショク)
辰宿列張(シンシュクレッチョウ)
0 件のコメント:
コメントを投稿