ショウペンハウエル
「現存在の虚無性に関する教説によせる補遺」より
我々の人生の場景は粗いモザイクの絵に似ている。この絵を美しいと見るためには、それから遠くはなれている必要があるので、間近にいてはそれは何の印象をも与えない。それと同じ道理で、何かしら憧れていたものを手にいれることは、それを空しいと覚ることである。
こうして我々はいつもより良いものを待ち望んで生きている。
そうかと思うと我々はまた、しばしば過ぎ去ったものへの悔いをまじえた憧れのうちに生きている。
ところが眼前にあるものについては、ただ一寸の間それを我慢するといったような風で、それに対しては目標に達するための道程というだけの意味しか与えられていない。
こういう次第であるから、大抵の人達は、晩年に及んでおのが生涯をふりかえってみた場合、自分は自分の全生涯を全くゆきあたりばったりに生きてきてしまったのだという風に感ずるようになるであろう。
そうして、自分があんなにも無造作に味わいもせずに通りすごしたものこそ、実は自分の生命だったのであり、それこそ自分がそれを待ち望んで生きてきた当のものにほかならなかったことを知って、怪しみ訝ることであろう。
このようにして、通例、人間の生涯とは、希望に欺かれて死のかいなにとびこむ、ということにほかならないのである。
※髪型がいいですね。
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