次の本ができるまで その307
小山内薫『巴里素描』より
ブウロオニュの森
濡れ場によし。
殺し場によし。
朝は独り者の散歩に──
真昼は子供の遊び場に──
夕暮れは語らひによし。
夜更けては、企らみあるものによし。
春は中年の女と一緒がよし。
秋は処女と──
夏は職業婦人と──
冬は……どんな女とでもよし。
ヴォルテエル河岸
霧雨。──外套の襟を立てる。
──いくら……これ?
──ラ・ハルプの文学史……六十法。
──さよなら。
小蒸気の笛。
──危ない、滑りますよ、奥さん。
モンパルナスの墓地
──黙つてるね。
──さうでもない。
──何が可笑しいんだ。
──可笑しいもんか。
ボオドレエルの死像の前──
(人、象徴の森を経て、こゝを過ぎ行き……)
落葉、落葉、落葉……。
※オリンピックに便乗して。
0 件のコメント:
コメントを投稿