2015年6月9日火曜日

次の本ができるまで その4

曲亭馬琴『羇旅漫録(きりょまんろく)』です。
享和二年(1802)春、36歳の馬琴は意を決してひとり関西方面への旅に出ます。5月9日に江戸をたち名古屋、京都、大阪、伊勢をめぐり江戸へ戻ったのは8月24日、およそ75日間におよぶ長い旅でした。『羇旅漫録』はこの道中で見聞した奇事、奇談、風俗、流行、人物などを克明に記録したもので、当時の社会を知る資料としても高い価値があります。ぜひ原本をお読みください。

小さな本に何百ページもの文章は入らないので「旅程概略」と「心得」だけを一冊にしようと思いました。馬琴と一緒に旅をしている気持で読んでいると、徒歩で旅をした時代の困難が伝わってきます。また昔の人の健脚にも驚かされます。私はついつい「帰りは電車で…」と考えてしまいました。うまく纏められなかったのが残念です。