2022年7月7日木曜日

次の本が出来るまで その247

 人さまざま テオプラストス


一五 へそまがり


 へそまがりとは、言葉使いの点で、態度の無礼なことである。そこで、へそまがりの人とは、およそつぎのようなものである。

 すなわち、「誰それはどこにいますか?」と人から尋ねられると、「私をそっとしておいてもらいたいですね」と答える。

 また、挨拶をされても、挨拶を返さない。

 また、ものを売るときは、買手に、自分は手放したいのだが、どれほどの値になるかね、とは言わずに、あんたはいくら儲けるのかね、と尋ねる。

 また、〈先方に〉祝いごとがあったので、〈へそまがりの人にも〉敬意を表し、御馳走を届けにきた人に、なきにひとしい贈りものですな、と言う。

 また、ついうっかり自分に泥をかけたり、押したり、足のつま先を踏んづけたりした人を、断じて許さない。

 さらにまた、友人が寄附を求めにくると、出すのはごめんですね、と言いはするが、あとになってそれを持ってゆき、私はこの貴重な金を無駄に失うんですな、と言う。

 また、道でつまずきでもすれば、きまってその石に悪態をつく。

 また、相手が誰であれ、長い間待つという辛抱はしない。

 また、唄うことも、詩句の朗唱も、踊ることも拒む。

 また、神々にすらお祈りをしないのが、彼の常である。


テオプラストスは紀元前の人でアリストテレスの門下。へそまがりの他、空とぼけ、へつらい、無駄口、粗野、お愛想、無頼、おしゃべり、噂好き、恥知らず、けち、いやがらせ、お節介、上の空、迷信、不平、疑い深さ、不潔、無作法、虚栄、しみったれ、ほら吹き、横柄、臆病、独裁好み、年寄の冷水、悪態、悪人びいき、貪欲について解説している。いずれもネット上では日常的に見聞きするものばかりである。