人さまざま テオプラストス
一五 へそまがり
へそまがりとは、言葉使いの点で、態度の無礼なことである。そこで、へそまがりの人とは、およそつぎのようなものである。
すなわち、「誰それはどこにいますか?」と人から尋ねられると、「私をそっとしておいてもらいたいですね」と答える。
また、挨拶をされても、挨拶を返さない。
また、ものを売るときは、買手に、自分は手放したいのだが、どれほどの値になるかね、とは言わずに、あんたはいくら儲けるのかね、と尋ねる。
また、〈先方に〉祝いごとがあったので、〈へそまがりの人にも〉敬意を表し、御馳走を届けにきた人に、なきにひとしい贈りものですな、と言う。
また、ついうっかり自分に泥をかけたり、押したり、足のつま先を踏んづけたりした人を、断じて許さない。
さらにまた、友人が寄附を求めにくると、出すのはごめんですね、と言いはするが、あとになってそれを持ってゆき、私はこの貴重な金を無駄に失うんですな、と言う。
また、道でつまずきでもすれば、きまってその石に悪態をつく。
また、相手が誰であれ、長い間待つという辛抱はしない。
また、唄うことも、詩句の朗唱も、踊ることも拒む。
また、神々にすらお祈りをしないのが、彼の常である。
※テオプラストスは紀元前の人でアリストテレスの門下。へそまがりの他、空とぼけ、へつらい、無駄口、粗野、お愛想、無頼、おしゃべり、噂好き、恥知らず、けち、いやがらせ、お節介、上の空、迷信、不平、疑い深さ、不潔、無作法、虚栄、しみったれ、ほら吹き、横柄、臆病、独裁好み、年寄の冷水、悪態、悪人びいき、貪欲について解説している。いずれもネット上では日常的に見聞きするものばかりである。