2015年7月17日金曜日

次の本が出来るまで その9

今回は出来なかった本の話ではなく作品を紹介したいと思います。
5点の写真は抽象画のように見えますがそうではありません。これは襤褸(ぼろ)です。写真からは想像もできませんが、元は新品の布団だったり、一枚の着物だったのでしょうか。それが時代を経て、修繕に修繕を重ねた結果このようなものになりました。
これを見て私はやや感傷的に、かじかんだ手を囲炉裏の火で温めながら針仕事をする女性の姿を思い出しました。これらを繕ったのは、家族が寝静まった夜ふけ、鉄瓶から吹き上がる湯気の音だけが聞こえる冬の寒い晩に違いないと……。ああ、どこからか「母さんの唄」が聞こえてきます。



※襤褸の美しさを教えて頂いた額田晃作さまに心より敬意を表します。

2015年7月13日月曜日

番外


内村鑑三『警世雑著』(明治29年・民友社刊)より

正義は口にあり、
政略は腹にあり、
義は名の為に求め、
名は利の為に尊ぶ。

身は党則に縛られて自由を唱え、
心は利欲に駆られて愛国を叫ぶ。
衆愚の声に震え、
寡婦の涙に動かず。

野の獣に断あり、
彼に断なし。
空の鳥に情あり、
彼に情なし。