2021年11月11日木曜日

次の本が出来るまで その217

 『チエーホフの手帖』より


お祖父さんに魚を食べさせる。

もしもお祖父さんが中毒しないで、命に別状がなかったら、

家じゅうの者が魚を食べる。


                 ♦︎


悪德──それは人間が背負って生れた袋である。


                 ♦︎


死は怖ろしい。だが、永劫に生きて決して死ぬことがないと意識したら、

もっと怖ろしいことだろう。


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特別寝台の乗客──それは社会の屑だ。


                 ♦︎


ああ戦慄すべきは骸骨ではなくて、私がもはや骸骨に恐怖を感じないという事実だ。


                 ♦︎


野原の遠景、白樺が一本。その絵の下の題名に曰く、〈孤独


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自分が悪いと感じる人間だけが悪人であり、従って後悔もできる。


                 ♦︎


幸運に恵まれた、何でもトントン拍子に成功する人間は、

時として何と鼻持ちのならぬことだ!


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まだ母親の胎内(はら)から出て来ない嬰児のように物を知らぬ男。


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彼は己の卑劣さの高みから世界を見おろした。


                 ♦︎


あの世へ行ってから、この世の生活を振り返って

あれは美しい夢だった……と思いたいものだ。


※以前製作した『21のことば』より選びました。