2018年1月26日金曜日

次の本が出来るまで その85

民家採集


 わたしはこの本の図版をただ懐かしくながめている。達者なスケッチと簡単な間取図から家の中を想像し、薄暗い土間の臭いやナメクジが這う台所の湿った空気を思い出している。作者の今和次郎は全国を歩き回り地方の民家の特徴と構造を研究した民俗学者である。東京美術学校出身の和次郎は、その才能を発揮し精緻なスケッチを数多く残した。それらを見ていると民家のどこかに洟を垂らした幼い自分がいるような気がしてくる。





※『民家採集』今和次郎集 第3巻 2005 ゴメス出版
 図書館で借りた。