2015年6月18日木曜日

次の本ができるまで その6

作れなかった本のことばかり書いています。

馬琴の『曲亭雑記』を読んでいると「深川八幡宮祭禮の日 永代橋破落の紀事」という文章があった。
文化4年(1807)8月、富岡八幡宮の祭礼に向かう人々で混雑する永代橋が崩落し、数千人が死亡する大惨事が発生した。崩落の原因はお殿様の船が川を下るので、橋の通行を一時的に禁止にしたことにある。船が行き過ぎたあと、待っていた人たちが先を争って渡り始め、橋の上は群衆で大混乱となり、次々と押し寄せる人の重さで橋桁が崩落したのである。当日は馬琴の三人の子供たちも祭礼を見に出掛けていたが、早朝であったため事無きを得た。事件を聞いた馬琴は早速、川に落ちた人や崩落を見た人から話を聞きその有様を克明に書き残している。橋桁の老朽化も原因で、現代にも通じる事だと思い本にしよう作り始めたが、少し熱が冷めると「誰がこれを読んでくれるのか」という疑念が湧きだし、そのままになっている。

本文は総ルビ、時間や単位は( )の中に現代表記したが、今の文章に親しんでいる人には読みづらいかもしれない。

※どうでもいいことですが、「ですます」を「である」にしました。

 

2015年6月15日月曜日

次の本ができるまで その5

本を作り始めた頃、どうしたら活版印刷の雰囲気が出せるだろうかと考えました。見本にしたのは志賀直哉の「山荘雑話」、同じく「身邊記」、芥川の「子供の病気」です。それぞれ書体も組み方も違うので同じような書体を使って組んでみました。右は本をスキャンしたもの、左は真似て組んだものです。漢字やかなを微調整すると雰囲気だけは伝えられると思いました。結論からいえばやはり印刷方法の違いが大きいと思います。やや専門的な話になりました。不悪。