2025年3月14日金曜日

つぎの本ができるまで その322

少年の頃に…


田舎の風呂屋の脱衣場に貼ってあった「月曜日のユカ」の映画ポスター。ポニーテールの加賀まりこが男物のワイシャツを羽織って、ちょっと拗ねたような表情でこちらを見ているというものだった。ポスターを見てぜひ映画を観たいと思ったが、結局見ずじまいで、ポスターの印象だけが脳裏に焼き付いている。風呂上がりにはいつも〈フルーツ牛乳〉を飲んだ。



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「黒のシリーズ」は田宮二郎の当たり役で、面白かった。刺激の少ない田舎の中学生にはちょっとしたシーン(恋人が悪人に連れ去られ、あわやというところで主人公に助けられる)にハラハラドキドキした。同じ理由で「眠狂四郎シリーズ」や「くノ一シリーズ」もものすごく楽しみにしていた。映画を見ながらいつも〈さきイカ〉を食べた。



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「鬼婆」は初めて見た成人映画だ。中三だった。友だちと三人で観に行ったが、期待はまったく裏切られた。主人公の乙羽信子と吉村実子が、ボロを身にまとい山小屋のような場所で言い争ったりするもので一向に面白くなかった。あとで知ったが新藤兼人監督の芸術作品だったらしい。帰りに三人でぼやきながら〈お好み焼〉を食べた。



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岩下志麻の「五瓣の椿」も忘れられない。身内を殺された娘が、その美貌を武器に復讐する話だったと思うが、最後のほう、屋形船の中で悪代官を相手の濡れ場があり、そこで乳房がポロリと出るシーンがあった。時間にすればわずか一、二秒のこの場面がいつまでも忘れられなかった。外にでて米屋で〈プラッシー〉を飲んだ。



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土曜日の午後、学校の帰りに「日本春歌考」を見た。高校生だった。どんな話だったかまったく覚えていない。主演は荒木一郎だったと思う。二本立てで「夜の夜光虫」という映画も見た。主役の大原麗子は可愛かった。田舎にはゼッタイにいない女の人だと思った。ストーリーはもちろん覚えていない。帰りにガード下で〈タコ焼き〉を食べた。


※記憶があいまいなまま書いているので、思い違いがあるかもしれません。不悪。