2024年11月29日金曜日

次の本ができるまで その318

 微笑


「フフン」と少し鼻にかかった甘い声で君が笑う。

ボクはその声がとても好きだ。

その笑い声が聞きたくて

ボクはバカな話を際限なく続けている。

ウソをホントに、ホントをウソに

あることないこと、おもしろおかしく

テーブルの上の料理もとうに冷めてしまった。

君はそのたびに小さな笑い声を聞かせてくれる。

ボクが話し疲れ、ひと息ついたとき、君が言った。

「おしゃべりな男って大キライ!!」



変装


M君は友達がいない。

趣味は「変装」。

毎日、何時間も鏡の前に座って、いろいろな人物に変装する。

老人、サラリーマン、労働者、ヤクザ、ときには女性にもなる。

満足すると、その格好で繁華街へ出かける。

デパートの前で人待ち顔で立ってみたり、

肩が触れ合う雑踏の中をあてもなく歩いたりする。

「だれもボクが変装していることに気付いていない」

これが快感だと言う。

M君は友達がいない。


※そろそろ飽きてきました。