2020年3月25日水曜日

次の本が出来るまで その158

芭蕉翁「二虫」の字に賛す


ある好事家に秘蔵の一幅があった。「二虫」の二字を横に書きつらねたものだが、好事家もさすがにその意味を解し兼ね、面白き賛でもあればと、当時名のある人々に接する毎に賛を求めたが、みなその意味がわからず筆を下すものもなかった。そこへ或る日、芭蕉翁が此の家に宿泊することになり、主人はさっそく例の幅を取り出し、ぜひ賛を書いていただきたしと懇願すれば、翁とりあへず

風と月裸になりて相撲とる

と書いたという。


※風の𠘨と月の外側を取ると虫と二が残る。それが上着を脱いで相撲を取るようだとの解釈らしい。しかし芭蕉がこんな狂歌師のような賛を書くとは思えない。