2020年3月20日金曜日

次の本が出来るまで その157

香川景樹翁


《次の本が出来るまで その150》の続きです。

香川景樹翁が頼山陽(らいざんよう)と相携えて京都の稲荷山に詣でし時、
頼門の書生歌よむ心得を問ひしに
景樹翁「帰るにはまだ日も高し稲荷山 伏見の梅の盛り見てこん」と詠みて、
歌は前に趣向を求むるに及ばず只ありのままに詠むものなりと語りたり。

          *    *    *

或る俳諧師「米洗う前に蛍の二ツ三ツ」という句を得たり。
これは上々の出来と喜び、景樹翁の許に行きこれを示されけるに、
景樹翁これを見て「この俳諧いかにも面白し。されどその蛍は死したるものと思はるる。
これ如何に」と問う。
俳諧師大いに怒り其の故を詰(なじ)るに、
景樹翁「さればなり。もしその蛍の飛行するものならんには、
前に」を「前を」と云はざるべからず」と。
これを聞きたる俳諧師大いに悟るところありしといふ。

※お後がよろしいようで。

2020年3月15日日曜日

次の本が出来るまで その156

盲心経 めくらしんぎょう


江戸時代のおわり頃、文字が読めない人に般若心経を図で読ませる「盲心経(めくらしんぎょう)」というものがあったと橘南谿(たちばななんけい)が『東遊記 後編』に書いています。場所は盛岡の城下から七八十里北西の田山村というきわめて辺鄙な所で使われていたようで、下の図はそれを写したものです。解説もありますが、よくわかりません。一番下に般若心経の原文を掲載します。


摩訶般若波羅蜜多心経
観自在菩薩。行深般若波羅蜜多時。照見五蘊皆空。度一切苦厄。舎利子。色不異空。空不異色。色即是空。空即是色。受想行識。亦復如是。舎利子。是諸法空相。不生不滅。不垢不浄。不増不減。是故空中。無色無受想行識。無眼耳鼻舌身意。無色声香味触法。無眼界乃至無意識界。無無明亦無無明尽。乃至無老死。亦無老死尽。無苦集滅道。無智亦無得。以無所得故。菩提薩埵。依般若波羅蜜多故。心無罣礙。無罣礙故。無有恐怖。遠離一切顛倒夢想。究竟涅槃。三世諸仏。依般若波羅蜜多故。得阿耨多羅三藐三菩提。故知般若波羅蜜多。是大神呪。是大明呪。是無上呪。是無等等呪。能除一切苦。真実不虚。故説般若波羅蜜多呪。即説呪日。羯諦羯諦。波羅羯諦。波羅僧羯諦。菩提薩婆訶。般若心経。

※誰かが考えたのでしょうね。画ならわかるだろうと。