恋愛談義 ラ・ロシュフコー
恋愛を定義することはむずかしい。われわれが言いうることはただ次のことだけである。
すなわち、「それは霊魂においては支配の情熱、精神においては思想の一致、そして
肉体においてはいろいろな儀式を重ねたすえにけっきょく愛するものを所有したいという
隠れたそして機敏なる欲望。」
もう愛しあわなくなったときにかつて愛しあったことを思いだして恥ずかしく思わないものはまれである。
恋愛をその大部分の結果によって判断すると、それは愛情よりもかえって憎しみのほうに似ている。
恋愛はただひといろしかない。だがその模写(コピー)はさまざまで千をもってかぞえる。
一ぺんも恋愛をしたことのない女を見いだすことはできるが、ただの一ぺんしか色恋をしたことのない女はまことにまれである。
恋愛は火と同じく、不断の動揺なしには存続することができない。だから、希望したり心配したりすることをやめれば、それっきり命たえる。
ほんとうの恋愛は幽霊みたいなもの、皆がその話をするが、正体を見たものはほとんどいない。
※何でしょうね、あのザワザワした感情は。