2015年5月17日日曜日

『電車の女』森鷗外


『電車の窓』は森鷗外の小品です。
冬の夕暮れ、停車場で市電を待っていた鷗外の隣で美しい女が同じ電車を待っていました。女は目を伏せ俯向いたまま肩をすぼめていかにも寂しそうでした。気にかかった鷗外は電車内の女を観察します。女の身なりをチェックしかんざしに書いてある文字を読もうとしたり、窓を閉めようとする女に手を貸さず困るようすを見ていたり、そして勝手に「鏡花の女」と名付け、女の不幸な境遇を頭の中でどんどん作り上げていきます。これは作者の妄想が作り上げた小説です。
しかし鷗外に共感する男子は多いはずです。いつの時代も影のある美しい女性は男の眼を引くもの、男たちは電車内で前の席に坐った女性の日常をいろいろ想像していることなど……どうも今回は「鏡花の女」に惑わされてしまったようです。

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