2016年6月13日月曜日

次の本ができるまで その22

スーパーの前で


おじいさんは何かにつまづいた。踊るように二三歩進むと、前のめりに倒れた。提げていた紙袋から今夜のおかずらしいコロッケが二つ地面に転がった。カエルのように這いつくばった姿がおかしかったのか、見ていた誰かが声を押えて笑った。おじいさんは聞こえないふりをして、抱き起こしてくれた人に礼を言うと、拾い集めたコロッケを入れた紙袋を手に、おぼつかない足どりでまたそろそろと歩き出した。


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