2016年10月21日金曜日

次の本が出来るまで その35

大雅堂


むかし、ある人が画家の大雅堂に訊いたことがあつた。


「先生、つかぬ事をお尋ねするようですが、絵といふものは一体どんなところがむづかしいので……」


大雅は一寸額へ手をやつた。


「さやうさ。絵のむづかしいところといへば、まづ、紙の上に何一つ描いてないところでせうな。」


 さすがに大雅だけあつて、絵の急所を知つている。
これを芸術家の生涯に見るも、その最も芸術的なのは、製作の最中よりも、寧ろ沈黙静思の間だといつていい。


※薄田泣菫。どの本に載っていたかは不明です。

下は大雅堂「草書千字文」の一部

天地玄黃(テンチゲンコウ)
宇宙洪荒(ウチュウコウコウ)
日月盈昃(ジツゲツエイショク)
辰宿列張(シンシュクレッチョウ)

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