2019年11月20日水曜日

次の本が出来るまで その145

島崎藤村「いろはがるた」


藤村自作のいろはがるた。感想集『市井にありて』(昭和五年、岩波書店)に掲載。

 犬も道を知る
 櫓は深い水、棹は浅い水
 鼻から提灯
 鶏のおはようも三度
 星まで高く飛べ
 臍も身のうち
 虎の皮自慢
 ちいさい時からあるものは、大きくなってもある
 林檎に目鼻
 沼に住む鯰、沼に遊ぶ鯰
 瑠璃や駒鳥をきけば父母がこいしい
 丘のように古い
 わからずやにつける薬はないか
 賢い烏は、黒く化粧する
 好いお客は後から
 竹のことは竹に習え
 零点か、百点か
 空飛ぶ鳥も土を忘れず
 つんぼに内緒話
 猫には手毬
 なんにも知らない馬鹿、何もかも知っている馬鹿
 蝋燭は静かに燃え
 胸をひらけ
 瓜は四つにも、輪にも切られる
 猪の尻もちつき
 のんきに、根気
 玩具は野にも畠にも
 草も餅になる
 藪から棒
 誠実は残る
 決心一つ
 不思議な御縁
 独楽の澄む時、心棒の廻る時
 枝葉より根元
 手習も三年
 鸚鵡の口に戸はたてられず
 里芋の山盛り
 菊の風情、朝顏の心
 雪がふれば犬でもうれしい
 めずらしかろう、面白かろう
 耳を貸して、手を借りられ
 仕合せの明後日
 笑顔は光る
 日和に足駄ばき
 持ちつ持たれつ
 蝉はぬけがらを忘る
 西瓜丸裸

※ふと思いついたが、今年の漢字は「水」ではないだろうか。

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