2015年5月5日火曜日

『黒猫・餅饅頭』薄田泣菫



詩人である薄田泣菫はまた随筆家として『茶話』など数多くの軽妙な文章を残しています。無駄のないその文体は短文のお手本としても高く評価されています。今回は随筆集『猫の微笑』より「黒猫」と「餅饅頭」を選びました。

「黒猫」は荷車で子猫を轢いた男とそれを見た婦人活動家の女性とのやりとりです。作者が実際に見た出来事かも知れません。この作品は関西弁がポイントです。ヒステリックな女性といかにも大阪人らしいオッサンのやりとりがコントのようでどこまで真剣なのかよくわかりません。昭和初期の関西弁がいい味をだしています。

「餅饅頭」は古い本に載っていた話。京都で人気の饅頭屋へ、乞食が饅頭を買いに行きました。しかしお店の主人は売らないといいます。お金を払うなら誰であってもお客だろうという乞食と、人の慈悲で生きているような人に売ることはできないと言う主人。このやりとりに泣菫は感想を述べています。なるほどこの話、京都ならいかにもありそうなことです。これが大阪ならば主人は「毎度、おおきに」と頭を下げていたかも知れません。ところが京都ではこれが通用しません。なんだかんだと理屈をいいます。ほんまむずかしいところどす。

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