2015年5月6日水曜日

『獨樂吟』 橘曙覧




幕末の歌人橘曙覧の『独楽吟』です。正岡子規が『日本』誌上おいて、「源実朝以後、歌人の名に値するものは橘曙覧ただ一人」と絶賛しその名を知られることとなりました。
「たのしみは…」ではじまり「…の時」で終わる50余りの歌を集めたものです。ほとんどは日常生活の些細な出来事を詠んだもので、つつましい暮らしの中で見つけた楽しみや喜びを素直に表現しています。

たのしみは草のいほりの筵ひとりこゝろを靜めをるとき

たのしみは紙をひろげてとる筆の思ひの外に能くかけし時

たのしみは妻子むつまじくうちつどひ頭ならべて物をくふ時

たのしみは朝おきいでゝ昨日まで無りし花の咲ける見る時

たのしみはつねに好める燒豆腐うまく煮たてゝ食せけるとき

0 件のコメント:

コメントを投稿